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2018年4月19日

圧縮性と体積弾性係数

1.3 流体の基本的性質

1.3.6 圧縮性と体積弾性係数
    例えば、圧力$P$において体積$V$の気体があるとしよう。これに圧力を$\triangle p$だけ加えると、流体の体積は$V+\triangle V$ $(\triangle V<0)$となる。このとき、圧力増加$\triangle p$が$P$に比べて小さければ、体積変化率$-\triangle V/V$は$\triangle p$に比例すると考えられる。この関係を式に表すと、

$\triangle P=-K \dfrac{\triangle V}{V}$

となる。このとき比例係数$K$[Pa]を体積弾性係数と呼ぶ。この逆数を圧縮率という。[1] 圧縮率は計算を安定化させるために数値解析で用いられることもある。

    気体の体積弾性係数は圧縮するときの条件により大きく異なる。温度一定の気体の状態変化(定温変化)では$n=1$において、

$pV=RT=c (cは定数)$

が成り立つ。[1] また、圧縮変化が一瞬で終わるような場合は、周りの気体と熱の交換がないと近似できる。このような変化を断熱変化といい、

$pV^{\gamma}=c (cは定数、\gammaは定圧比熱cpと定積比熱cvの比)$


で表すことができる。$\gamma$は1原子分子の理想気体では5/3、2原子分子の理想気体では7/5になる。[1]


参考文献
[1]: 同志社大学工学部 水島 二郎, 流れ学

2018年4月18日

気体の状態方程式

1.3 流体の基本的性質

1.3.5 気体の状態方程式
    通常の気体を考えたときに、ボイルの法則とシャルルの法則が成り立つ。ボイルの法則は温度一定、シャルルの法則は圧力一定の条件で成り立つ。[1] まず、ボイルの法則を考えてみよう。温度が一定のもとでピストン付きのシリンダーに気体の体積$V$が入っていたとする。シリンダーのピストンを押すと内部の気体の体積は減少する。内部温度が一定の時、気体の体積$V$は圧力$P$に反比例し、その積は一定になるはずである。つまり、

$PV=一定$


が成り立ち、これをボイルの法則と呼ぶ。[1]


    シャルルの法則は圧力一定のもとで温度が上昇すると体積も増加する。つまり、気体の体積は絶対温度に比例することになる。式で表せば

$\dfrac{V}{T}=一定$

となる。[1]

図1.3.5.1: ボイルの法則とシャルルの法則

    ボイルの法則とシャルルの法則をまとめて、ボイル・シャルルの法則といい、

$\dfrac{PV}{T}=一定$

となる。[1]

    この法則に従う理想的な気体を理想気体と呼ぶ。すなわち、$n$モルの理想気体の体積を$V$、圧力を$P$、温度を$T$とすれば、

$pV=nRT$

の関係がある。$R$は気体の種類のよらず一定で、その値は$R=8.31$ [$\mathrm{J/mol\cdot K}$]である。[1]

    流れ学では$n$モルの気体を考える代わりに$1\mathrm kg$の気体を考えることが多い。そのときは$1\mathrm kg$当たりの体積、すなわち比体積$v$を用いて、ボイル・シャルルの法則を

$pv=\overline RT$

と表す。ここで、$1\mathrm{kg}$あたりの気体定数$\overline R$ [$\mathrm{J/(kg\cdot K)}$]は物質によって異なる値をとる。ちなみに、空気の気体定数$\overline R$はおおよそ$287$ [$\mathrm{J/(kg\cdot K)}$]となる。[1]


参考文献
[1]: 同志社大学工学部 水島 二郎, 流れ学

2018年4月17日

表面張力

1.3 流体の基本的性質

1.3.4 表面張力
    ガラス板の上に水を垂らすと、水滴は球に近づこうとする。また、水を入れた容器に細いガラス管を入れるとガラス管の水面は容器の水面よりも高くなることがある(これを毛細管現象という)。このような現象が起きる要因として流体に引き合う力が働いているためである。この引き合う力を表面張力という。[1]

    毛細管現象を考えてみる。[2]

図1.3.4.1: 毛細管現象

    図1.3.4.1のように液の高さ$h$での表面張力と液体に働く重力の釣り合いを考えると、

$\pi\left(\dfrac r2\right)^2h\rho g=\pi rT\cos\theta$

    となる。ここで、$r$は管の直径、$T$は表面張力、$\theta$は接触角である。

    上記の式の左辺は上昇した水位の質量($\pi\left(\dfrac r2\right)^2h\rho$ [$\mathrm{kg}$])と重力($g$ [$\mathrm{m/s^{2}}$])を掛けたもの、右辺は単位長さ当たりの表面張力$T$ [$\mathrm{N/m}$]がガラス管一周分($\pi r$ [$\mathrm{m}$])にかかっていることを示している。この釣り合いの式から高さ$h$は

$h=\dfrac{4T\cos\theta}{\rho gr}$

    と表される。ガラス管に接するとき接触角が$\theta=0^\circ$なので、水はガラス管の中を上昇する。例えば、$20\ {}^\circ\mathrm{C}$の水の表面張力は$72.8\mathrm{mN/m}$ ($7.28\times10^{-2}\mathrm{N/m}$)、密度を約$1\mathrm{g/cm^{3}}$ ($1000\mathrm{kg/m^{3}}$) とすれば、およそ$3\mathrm{mm}$上昇する。[5] [6] 一方水銀は接触角が$\theta=130^\circ\sim150^\circ$なので、ガラス管の中を下降する。例えば、$20\ {}^\circ\mathrm{C}$の水銀の表面張力は$472\mathrm{mN/m}$ ($0.472\mathrm{N/m}$)、密度を$13.54\mathrm{g/cm^{3}}$ ($13540\mathrm{kg/m^{3}}$)とすれば、およそ$-1.4\mathrm{mm}$下降する。[5] [6]

図1.3.4.2: 水と水銀の毛細管現象の様子

    ではなぜ細いガラス管を挿すとガラス管内部の水位が上昇するのか。
    水が持つポテンシャルエネルギーを$U(h)$とすると、$U(h)$は重力と表面張力との和で示される。$U(h)$が最小の値をもつには、$dU(h)/dh=0$の時であるから、

$\dfrac{dU(h)}{dh}=\pi r^2h\rho g-4\pi rTcos\theta$

となる。左辺は0なので結局、初めに示した釣り合いの式が導かれる。つまり、この式が示す高さ$h$が水の持つポテンシャルエネルギーの最小位置となり、最も安定した位置になるためである。[1]


参考文献
[1]: 同志社大学工学部 水島二郎, 流れ学
[2]: JSMEテキストシリーズ 流体力学
[5]: http://subsites.icu.ac.jp/people/yoshino/SurfaceTension.html:水の特性、表面張力
[6]: http://e.sci.osaka-cu.ac.jp/yoshino/edu/water/chapter08.pdf: 第8章 液体の水 ~表面と界面~

2018年4月16日

粘性とせん断応力

1.3 流体の基本的性質

1.3.3 粘性とせん断応力
    図1.3.3.1のような管内の流れを考えてみる。流体の流れを分子レベルで見たときに、分子は壁に衝突したり、その分子が他の分子と衝突したりして運動量が減少する。[3]

図1.3.3.1: 管内の分子同士衝突

   このように分子の運動量の減少により、流体が流動しにくくなる作用を粘性という。[3]

   流動のしにくさは流体の粘り強さと言い換えることもできるだろう。この流体の粘り強さを数値化したのを粘性係数(粘度)という。粘性係数の単位は[$\mathrm{Pa\cdot s}$]である。[1]

   粘性係数に速度勾配の積が粘性力である。粘性力は空間的に一様な運動にする方向に働くため、せん断応力ともいう。[1]

   1枚の平板を過ぎる流れを見てみる。この場合には平板上で流速が$0$、ごく薄い層の外側での流速は$U$である。このような薄い層を境界層と呼ぶ。[1]

図1.3.3.2: 断面$\mathrm{x_1}$における境界層内の速度勾配の様子

   図1.3.3.2である$\mathrm{x=x_1}$での断面を考える。すると速度$\mathrm{u(x_1,y)}$は$\mathrm{x_1}$を固定しているため、速度勾配は$\mathrm{y}$方向のみとなり、$\mathrm{u(y)}$と表せる。この時、平板に働くせん断応力$\boldsymbol\tau$は速度勾配$\dfrac{du}{dy}$に比例して

$\tau=\mu\dfrac{du}{dy}$

    となる。[1]

    ただ、今後流体の運動を調べるときには粘性係数よりも動粘性係数の方が重要になる。動粘性係数$\nu$は粘性係数$\mu$と密度$\rho$の比で表され、

$\nu=\dfrac{\mu}{\rho}$

となる。動粘性係数$\nu$の単位は[$\mathrm{m^{2}/s}$]である。 [4]

    静止した水の中で棒をかきまわす場合考える。静止した水に力を加えるとまずかきまぜた箇所の水が動き出す。動き出した水と周囲の静止した水の間に働く粘性力により、周囲の水も動き出す。つまり、かきまぜることにより流体に与えた力が粘性力によってある速度で周囲へと伝わることを意味する。この周囲への“速度の伝わりやすさ”を示したものが動粘性係数である。[4]

    次に、水とペンキを比較してみる。棒でかき回したときに水はかき混ぜやすく、ペンキはかき混ぜにくい。これは動粘性係数が異なるためである。

    温度と粘性係数の関係を見ると、空気の粘性係数は温度が高くなると大きくなる。一方で水の場合は温度の上昇とともに小さくなる。理由としては空気の場合は分子が自由に運動しており分子間の相互作用が無視できるため、せん断応力は分子の移動に伴う運動量の交換に起因して現れる。つまり温度が上昇すれば運動量の交換がより行われるようになり粘性が上昇する。一方で液体の場合は、分子が引き合う力を常に及ぼしあっており、温度が上昇すると引き合う力が弱くなり粘性が小さくなる。[1][3]

図1.3.3.3: 温度上昇による空気と液体の分子運動のイメージ図


参考文献
[1]: 同志社大学工学部 水島二郎, 流れ学
[3]:  久保田浪之介 他, 今日からモノ知りシリーズ トコトンやさしい流体力学の本
[4]:  http://camellia.thyme.jp/files/pdf/Viscosity20151120.pdf: 粘性係数と動粘性係数の違い

応力と圧力


1.3 流体の基本的性質

1.3.2 応力と圧力
    応力とは単位面積あたりに働く力のことである。式で表すと、

$\boldsymbol\tau=\dfrac{\boldsymbol F}S$

    となる。ここで、$\boldsymbol\tau$:応力、${\boldsymbol F}$:面に働く力の大きさ、$S$:面積を示す。応力の単位は式から[$Pa(=\mathrm{N/m^{2}})$]である。[1]

    もう少し正確に説明していく。ある面に働く応力はベクトル量である。たとえば図1.3.2.1のように面内に働く応力を考えたとしよう。

図1.3.2.1: 密度と比体積

    力${\boldsymbol F}$を加えたとき、面に働く応力は面に垂直な方向成分の応力(法線応力${\boldsymbol n}$)と面に平行な方向成分の応力(接線応力${\boldsymbol t}$)に分解することができる。

    このことから力${\boldsymbol F}$は

$\overrightarrow F=F_v\overrightarrow n+F_h\overrightarrow t$

    となり、法線応力$\tau_v$と接線応力$\tau_h$はそれぞれ

$\tau_v=\dfrac{F_v}S$ , $\tau_h=\dfrac{F_h}S$

    と書くことができる。ここで、${\boldsymbol n}$は法線方向の単位ベクトル、${\boldsymbol t}$は接線方向の単位ベクトルを示す。[1]

    静止した流体を考えてみる。流体の面に垂直に働く力は作用・反作用の関係により押し合う力のみである。静止流体中での垂直応力(法線応力)を圧力と呼ぶ。また、静止流体中の面$S$に働く圧力を全圧力と呼ぶ。[1]

    この関係を式にすると、

$p=\dfrac PS$

    となる。ここで、$p$:単位面積当たりの圧力、$P$:全面積の圧力、$S$:面積である。

    静止した流体に関して述べてきたが、流動している場合は、圧力だけでなく接線応力が生じる。接線応力は流体が粘性をもち、流体運動に速度勾配があるときに生じる。粘性については、次節で説明する。[1]


参考文献
[1]: 同志社大学工学部 水島二郎, 流れ学

密度と比体積


1.3 流体の基本的性質

1.3.1 密度と比体積
    密度とは単位体積あたりに含まれる物質の質量のことをいう。単位は[$\mathrm{kg/m^{3}}$]で表す。逆に比体積とは、単位質量の物質が占める体積のことをいう。式で表すと、

$v=\dfrac1\rho$

となり、つまり密度の逆数[$\mathrm{m^{3}/kg}$]になる。[1]


図1.3.1.1: 密度と比体積


参考文献
[1]: 同志社大学工学部 水島 二郎, 流れ学

2018年3月15日

次元

1.2 単位と次元

1.2.2 次元

  • 次元
      ◆ 単位としばしば混同される概念である。
      ◆ 物理量$Z$をいくつかの基本的な物理量と組み合わせた際に、物理量$Z$に係る乗数を物理量の次元という。[1]

    ex.1) 物理量$Z$の次元$\left[Z\right]$

$\left[Z\right]=\left[A^\alpha B^\beta C^\gamma \cdots \right]=\left[A\right]^{\alpha} \left[B\right]^{\beta} \left[C\right]^{\gamma} \cdots$

$A_\mathrm{1}=A_\mathrm{2}+A_\mathrm{3}$

             左辺の$A_\mathrm{1}$および右辺の$A_\mathrm{2}$、$A_\mathrm{3}$の次元は互いに等しくなる
             ※物理法則等の式には加減乗除の演算記号が含まれるが、同じ次元量の同士でなければ演算は不可である。各項は同じ次元である必要がある。(=次元の斉次性の原理or同次元の法則)[1]

  • 次元解析
      ◆ 物理量同士の関係性について次元を用いて推定する方法。
      ◆ 力学、流体力学で用いられる基本的な物理量は以下の通りである。

質量[$\mathrm{M}$]、長さ[$\mathrm{L}$]、時間[$\mathrm{T}$]

    ex.1) 速度[$\mathrm{v}$]を長さ[$\mathrm{L}$]と時間[$\mathrm{T}$]を用いて表現

$\left[\mathrm{v}\right]=\left[\mathrm{LT}^{-1}\right]=\dfrac{\left[\mathrm{L}\right]}{\left[\mathrm{T}\right]}$

      ◆ 以下に、流体力学で用いられる物理量を基本量で示したものを表で示す。[1]

表1.2.1.4: 基本単位および基本量
物理量基本単位基本量
密度:$\rho$
$\mathrm{kg/m^{3}}$$\left[\rho\right]=\left[\mathrm{ML}^{-3}\right]$
温度:$\theta$
$\mathrm{K}$
$\left[\theta\right]=\left[\mathrm{K}\right]$
圧力:$P$$\mathrm{N/m^{2}}$$\left[P\right]=\left[\mathrm{ML}^{-1}\mathrm T^{-1}\right]$
運動量:$L_m$$\mathrm{kg\cdot m/s}$$\left[L_m\right]=\left[\mathrm{MLT}^{-1}\right]$
角運動量:$M_m$$\mathrm{kg\cdot m^{2}/s}$$\left[M_m\right]=\left[\mathrm{ML}^{2}\mathrm T^{-1}\right]$
  • 次元解析の例
       水中に働く浮力式に関して導出してみる。

図1.2.2.1: 水中に働く浮力

       浮力の次元  $\left[f\right]=\left[\mathrm{MLT}^{-2}\right]$

       浮力は体積$V$[$\mathrm{m^{3}}$]、水の密度$\rho$[$\mathrm{kg/m^{3}}$]、重力加速度$g$[$\mathrm{m/s^{2}}$]で決まる。これらの物理量と浮力の次元の関係性を考える。[1]

$\mathrm{MLT}^{-2}=\rho^{\alpha} g^{\beta} V^{\gamma}$
$\mathrm{MLT}^{-2}=\left(\mathrm{ML}^{-3}\right)^{\alpha} \left(\mathrm{LT}^{-2}\right)^{\beta} \left(\mathrm{L}^{3}\right)^{\gamma}$

       物理量$M$、$L$、$T$の各次元が等しいことから、係数$\alpha$、$\beta$、$\gamma$は以下のように求まる。[1]


$\alpha=1$、$\beta=1$、$\gamma=1$

       上記より以下の式が成立する。

$f=\rho gV$

参考文献
[1]: 同志社大学工学部 水島二郎, 流れ学, pp4-6, 2015年9月26日
[2]: http://www.th.phys.titech.ac.jp/~muto/lectures/Gelmg06/Gem_chap07.pdf, 第7講 電流が磁場から受ける力, pp1
[3]: 島 弘志, 国立単位系(SI)-安心・安全を支える世界共通のものさし, pp20-24, 2007年12月19日, 第1版第1刷発行
[4]: https://www.nmij.jp/library/units/
[5]: https://www.otsukael.jp/weblearn/chapter/learnid/87/page/7/category1id/29
[6]: https://ja.wikipedia.org/wiki/立体角
[7]: https://zukai-kikenbutu.com/buturikagaku/2-mol.html#bussituryou

SI単位系

1.2 単位と次元

  • 単位系
      ◆ 科学、工学、技術、産業分野では広く$\mathrm{SI}$(国際)単位系が用いられている。
          物理量の関係や法則または方程式を考える際に重要な概念となる。[1]

1.2.1 $\mathrm{SI}$単位系
      ◆ 一般的な物理量の単位として長さ、質量、時間等が挙げられる。
      ◆ 上記の単位系は以下のように分類できる。[1]
          ✦ $\mathrm{cgs}$単位系⇒長さ($\mathrm{cm}$)、質量($\mathrm{g}$)、時間($\mathrm{s}$)
          ✦ $\mathrm{MKS/MKSA}$単位系⇒長さ($\mathrm{m}$)、質量($\mathrm{kg}$)、時間($\mathrm{s}$)、電流($\mathrm{A}$)[1]
      ◆ $\mathrm{SI}$は国際単位系(Le Systeme International d’Unites)の略であり、$\mathrm{MSKA}$単位系を拡張したものである。[3]

 i. 基本単位の定義

    基本単位とは、長さ、質量、時間(秒)…といった基本物理量の測定単位として定義される。以下に、基本物理量に対応した基本単位を表1.2.1.1で示し、各単位ごとに説明を加える。

表1.2.1.1: 基本物理量および基本単位
基本物理量 基本単位
長さ $\mathrm{m}$(メートル)
質量 $\mathrm{kg}$(キログラム)
時間(秒) $\mathrm{s}$(セカンド)
電流 $\mathrm{A}$(アンペア)
温度 $\mathrm{K}$(ケルビン)
光度 $\mathrm{cd}$(カンデラ)
物理量 $\mathrm{mol}$(モル)


  • 長さ: m (メートル)
 1989年に白金イリジウム製の国際原器に基づいて定義されたメートルは、第11回CGPMにおいて放射の波長に基づいた定義に置換えられた。[3,4]

      ◆ 定義
          メートルは、1秒の299792458分の1の時間に光が真空中を伝わる行程の長さ

図1.2.1.1: メートルの定義

  • 質量:$\mathrm{kg}$(キログラム)
 白金90%・イリジウム10%の合金製の直径・高さともに約39mm円柱形状でできている国際キログラム原器により定義されたものである。[3,4]

      ◆ 定義
          キログラムは質量の単位であって、単位の大きさは国際キログラム原器の質量に等しい

図1.2.1.2: 日本国キログラム原器 (2018年再定義)

  • 秒:$\mathrm{s}$(セカンド)
      ◆ 定義の変換
          地球の自転 → 地球の公転 → セルシウス原子の周期(周波数)

          ✦季節変動や経度変動が生じるため(自転→公転)
          ✦更なる高精度化を図るため(公転→原子の周期)[4]

図1.2.1.3: 秒の定義変換の歴史

      ◆ 定義
          セルシウス133の原子の基底状態の二つの超微細構造準位の間の遷移に対応する放射の周期の9192631770倍の継続時間である[3]

  • 電流:$\mathrm{A}$(アンペア)
      ◆ 定義
          真空中に1m間隔で平行に配置された無限に小さい円形断面積を有する無限に長い2本の直線状導体に流れる一定の電流

          ✦長さ$1\mathrm{m}$の導体に$2\times10^{7}$ $\mathrm{N}$の力を及ぼし合う。[3]

      ◆ 2つの直線状導体に流れる電流と力の関係

          ✦ 十分に長い2つの直流電流が流れているとき、その電流を$I_\mathrm{1}$、$I_\mathrm{2}$[$\mathrm{A}$]とする。
          ✦ 電流$I_\mathrm{1}$が電流$I_\mathrm{2}$に及ぼす力を$F_\mathrm{21}$[N]、電流$I_\mathrm{2}$が電流$I_\mathrm{1}$に及ぼす力を$F_\mathrm{12}$[$\mathrm{N}$]とする。
          ✦ 直線導体に電流が流れると電流の向きに対して右回り(=右ねじの法則)に磁界が発生し、電流と磁場の向きの関係性(=フレミング左手の法則)から平行電流間に生じる力の向きが決まる。

図1 .2.1.4; 平行な電流の間に働く力

          ✦ 図1.2.1.4に示すように、2つの電流が同じ方向であれば互いに引き合い、逆向きであれば互いに反発する。
          ✦ 電流の定義が意味するところは上記のとおりである。[2]

  • 温度:$\mathrm{K}$(ケルビン)
      ◆ 定義
          水の三重点の熱力学温度の1/273.16倍である

      ◆ 水の三重点とは
          ✦ 水の固相(氷)、液相(水)、気相(水蒸気)の三相が共存する状態を水の三重点という。水の状態図及び三重点セルを図1.2.1.5に示す。[4]

図1 .2.1.5: 水の状態図および三重点セル

  • 光度:$\mathrm{cd}$(カンデラ)
      ◆ 定義
          周波数$540\times1012 \mathrm{Hz}$の単色放射を放出し、所定の方向における放射強度が$1/683 \mathrm{W}/\mathrm{sr}$(ワット毎ステラジアン)である光源の方向における強度である。

          ✦ 光度(明るさ)の単位カンデラ($\mathrm{cd}$)は、$\mathrm{SI}$基本単位で唯一の感覚量
          ✦ 単位の実現手法
              ろうそく → ペンタン灯(ガス灯) → 白金黒体炉 → 光源
          ✦ 光度は、光源から放射される光の単位立体角の光束量で表される。[5]
              光度$I$($\mathrm{cd}$) = 光束$\Phi$($\mathrm{lm}$) / 単位立体角$\Omega$($\mathrm{sr}$)

図1 .2.1.6: 光度の概要図

           ⚬ 立体角⇒平面上の同一点(角の頂点)からでる2本の半直線から錐面によって区切られた部分(=錐面の開き具合を立体的に可視化したもの)[6]

図1 .2.1.7: 立体角の概要図

  • 物質量:$\mathrm{mol}$(モル)
      ◆ 定義
          $0.012\mathrm{kg}$の炭素12の中に存在する原子の数に等しい要素粒子を含む系の物質量

          ✦ 物質量$1\mathrm{mol}$の表現は以下の図1.2.1.8のとおりである。[7]

図1 .2.1.8: 物質量(mol)の概念

 ii. SI組立単位

    組立単位とは、基本単位同士を掛け合わせたり単位のべき乗をとることにより、組み合わせた単位を1つの記号でまとめたものを組立単位($\mathrm{SI}$)という。

表1.2.1.2: 物理量に対するSI組立単位および基本単位
物理量SI組立単位基本単位
力$\mathrm{N}$(ニュートン)$\mathrm{m\cdot kg/s^{2}}$
圧力$\mathrm{Pa}$(パスカル)$\mathrm{N/m^{2}=kg/m/s^{2}}$
エネルギー・仕事・熱量$\mathrm{J}$(ジュール)$\mathrm{N\cdot m=kg\cdot (m/s)^{2}}$
仕事率$\mathrm{W}$(ワット)$\mathrm{J/s=kg\cdot m^{2}/s^{3}}$

      ◆ 組み合わせた基本単位の表示に関する注意点(表1.2.1.2)
        ex) 圧力($\mathrm{Pa}$)の組立単位⇒$\mathrm{kg/m/s^{2}=kg/(m\cdot s^{2})}$を示す。[3]

 iii. $\mathrm{SI}$接頭語

    物理量を$\mathrm{SI}$単位系で表す際に、理解しやすい大きさの数字で表したいときに接頭語を用いる。接頭語の表記は、数学における浮動小数点とよく似ている。[1]

    ex.1) $1013.25=1.01325 \times 10^{3}$
    ex.2) 1気圧 ($1\mathrm{atm}$)=$1013.25\mathrm{hPa}$  ※$1.01325\mathrm{bar}$($1\mathrm{bar}=1\mathrm{hPa}$)

表1.2.1.3: $\mathrm{SI}$接頭語および記号
倍数接頭語記号倍数接頭語記号
$10^{9}$ギガ$\mathrm{cd}$$10^{-1}$デシ$\mathrm{d}$
$10^{6}$メガ$\mathrm{M}$$10^{-2}$センチ$\mathrm{c}$
$10^{3}$キロ$\mathrm{K}$$10^{-3}$ミリ$\mathrm{m}$
$10^{2}$ヘクト$\mathrm{H}$$10^{-6}$マイクロ$\mathrm{\mu}$
$10^{1}$デカ$\mathrm{da}$$10^{-9}$ナノ$\mathrm{n}$

参考文献
[1]: 同志社大学工学部 水島 二郎, 流れ学, pp4-6, 2015年9月26日
[2]:http://www.th.phys.titech.ac.jp/~muto/lectures/Gelmg06/Gem_chap07.pdf, 第7講 電流が磁場から受ける力, pp1
[3]: 島 弘志, 国立単位系(SI)-安心・安全を支える世界共通のものさし, pp20-24, 2007年12月19日, 第1版第1刷発行
[4]: https://www.nmij.jp/library/units/
[5]: https://www.otsukael.jp/weblearn/chapter/learnid/87/page/7/category1id/29
[6]: https://ja.wikipedia.org/wiki/立体角
[7]: https://zukai-kikenbutu.com/buturikagaku/2-mol.html#bussituryou

2018年3月7日

流体の分類

1.1 流体の分類と連続体近似

1.1.2 流体の分類

流体の分類とは、物質としての分類ではなく流体の運動を分類するというものである。
一般的に、液体は圧縮するのに非常に大きな力が必要であり、気体は小さな力でも圧縮
できる。[1]

(1) 圧縮性による分類

 i. 液体 ⇒ 非圧縮性流体
      ◆ 液体の運動
          ✦ 圧縮しても体積および密度は変化しない。
          ✦ 非常に高速の運動を考えるときや音波の伝播を調査する際は圧縮性流体として
扱う。[1,2]

 ii. 気体 ⇒ 圧縮性流体
      ◆ 気体の運動
          ✦ 圧力の変化とともに体積および密度が変化する。
          ✦ 遅い流れを調査する際に圧縮性を無視できる。(=液体の流れとして扱うことが
できる)[1,2]

図1.1.2.1: 気体の圧縮における体積・密度変化

(2) 流体の流れによる分類

 i. 粘性/粘性力
      ◆ 流体が流れる際に、流れ場の中に速度の違いがあれば速度を小さくする方向に働く力を粘性力と言い、流体中で粘性力が働く性質を粘性と呼ぶ。[1]
      ◆ 流体が運動する際には粘性力の影響を受ける。しかし、流体が高速運動をしており物体がまわりにないとき粘性力の影響は小さい。[1]

 ii. 実在流体
      ◆ 日常身近でみられる流体。(ex.水あるいは空気・小川の流れ)圧縮性や粘性を持つ。
      ◆ 川岸では流体の流れが遅く、岸から離れるにつれて流速が増加する。
          ✦ 流体が粘性を持っていることにより起こる現象[2]

図1.1.2.2: 実在流体における流速分布

 iii. 理想流体
      ◆ 粘性がなく、力を加えても圧縮できない流体。(=完全流体)
      ◆ 流体間での摩擦を生じるせん断力が作用しない。=渦が発生しない[2]

図1.1.2.3: 理想流体における流速分布

 iv. ニュートン流体と非ニュートン流体
      ◆ ニュートン流体
          ✦ 水あるいは空気のように粘性が一定となる流体。
          ✦ 粘性係数$\mu$[$\mathrm{Pa\cdot s}$]が速度勾配$du/dy$に無関係で一定値をとる。[2]
             ▶ 速度勾配$du/dy$ ⇒ 速度$u$[$\mathrm{m/s}$]の任意の位置における速度勾配。
      ◆ ニュートン流体
          ✦ ペンキ、ポリマーなどのように粘度が高く、粘性により流速が変化する流体。[5]
          ✦ 粘性係数$\mu$[$\mathrm{Pa\cdot s}$]が速度勾配$du/dy$に依存する[2]


図1.1.2.4: 摩擦応力$\tau$ - 速度勾配$du/dy$
(3) 気体の分類

 i. 理想気体
      ◆ 分子の体積が0であり分子間力が働かない実在しない気体のことである。
      ◆ 温度が-273[$\ {}^\circ\mathrm{C}$](=0[$\mathrm{K}$])になっても液体や固体にならない。


      ◆ 理想気体において圧力・体積・温度の3つの要素間で一定の関係がある。この関係を数式化したものが “状態方程式”という。
      ◆ 理想気体の質量が$m$[$\mathrm{kg}$]の状態方程式は、ボイル・シャルルの法則により、$PV/T=$一定であり、質量$m$[$\mathrm{kg}$]と気体定数$R$を掛けたものと一定となるため、以下のような関係式となる。

$\dfrac{PV}{T}=mR$

         上記の式を変形すると以下のように表せる。状態方程式では質量$m$[$\mathrm{kg}$]ではなく「モル数」$n$(=物質量)で定義する[4](※詳細は1.3節参照)

$PV=mRT=nRT$

 ii.実在気体
      ◆ 空気、窒素、水素などの気体を示す。常温・常圧では理想気体として扱う。

      ◆ 加圧される場合には分子を無視できない。[4]

図1.1.2.6: 実在気体の概要図


参考文献
[1]: 同志社大学工学部 水島 二郎, 流れ学, pp4-6, 2015年9月26日
[2]: 久保田浪之介 他, 今日からモノ知りシリーズ トコトンやさしい流体力学の本 NDC501, pp10-13,26,27, 2007年9月28日 初版1刷発行, 2014年6月6日 初版8刷発行
[3]: https://ja.wikipedia.org/wiki/気体
[4]: http://d-engineer.com/netsuriki/boiru.html
[5]: https://www.bing.com/images/search?view=detailV2&ccid=igHTAEQF&id=B840D9011EDCDC78AB79CE1649C62FF846602BA7&thid=OIP.igHTAEQFTVn_VVvzYKBahgHaIs&q=%e3%83%9a%e3%83%b3%e3%82%ad&simid=608036885871267220&selectedIndex=57&ajaxhist=0

流体の定義

1.1 流体の分類と連続体近似

1.1.1 流体の定義

物質は固体・液体・気体の3態に分類される。流体は気体と液体を総称したものとして定義したものである。以下に、物質の3態の性質に関して簡単に記述する。[1]

(1) 物質
 i. 気体
  • 性質
      ◆ 気体を構成する分子が空間を自由に飛び回ることから分子間同士は隙間が大きい。
[1]
      ◆ 気体粒子間の相互作用は、電場・重力場が働く空間では微小なので無視できる。[3]
      ◆ 小さな圧力で容易に変形する。[1]
          (ex. 物質を容器に入れると同じ形に変形する。)
      ◆ 圧縮すると体積が変化するとともに密度も変化する。(=圧縮性流体)[1]


図1.1.1.1: 物質の3態概念図 -気体

ii. 液体
  • 性質
      ◆ 気体と同様小さな圧力で容易に変形する。[1]
      ◆ 圧縮しても体積はほとんど変化しない。(=非圧縮性流体)
          ✦ 液体や気体の運動を調査する際、圧縮性を無視および考慮する必要がある場合もある。[1]

図1.1.1.2: 物質の3態概念図 -液体

iii. 固体
  • 性質
      ◆ 液体と同様圧縮されにくい性質を持つ(小さい圧力では、ほとんど変形しない)

図1.1.1.3: 物質の3態概念図 -固体

(2) 流体の運動
 i. 連続体近似の概要および考え方
  • 概要
      ◆ 物質の分子間距離と比較して非常に大きなスケールの形状・現象を取り扱う際に用いる。(=連続体仮説)[1]
      ◆ 図1.1.1.4に示すように、連続体近似は原子・分子といった物質の構成を無視することから、分子の微視的な集団として定義される。(=連続体)

図1.1.1.4: 連続体近似の概要図

      ◆ 微小な分子の集団が運動すると、巨視的に空間構造が変形する。[1]
図1.1.1.5: 分子運動における空間構造の変形

          ✦ 固体・液体の分子間距離⇒$2\sim3\times10^{-10}$(液体⇒$20\ {}^\circ\mathrm{C}$の標準状態)
          ✦ 酸素・窒素の分子間距離⇒$34\times10^{-10}$[$\mathrm{m}$]
          ✦ 固体の弾性変形を考える際にもしばしば用いられる。[1]
  • 考え方
      ◆ 連続体における変形および運動は、微視的なスケールにおいても存在することを意味する。(=原子や分子を考慮しない)
          ✦ ex.) 微小空間体積$\delta V$に含まれる物質の質量$\delta M$とした際の密度$\rho$

$\rho=\displaystyle \lim_{\delta V \to 0} \dfrac{\delta V}{\delta M}$

             $\delta V$が非常に小さくなる極限を考えると、原子よりも小さな長さスケールで連続体を取り扱うことになる。
図1.1.1.6: 密度の定義

      ◆ 図1.1.1.6の左図のように体積を大きくとって密度を測定すると、時間的に密度変化は小さくなるが、密度の測定位置に誤差が生じる。一方、同右図のように体積を小さくとって密度を測定すると、密度の測定位置が正確となる。[2]

ii. クヌーセン数
      ◆ 固体や液体の場合、常に隣り合う分子間で相互作用する。(運動量やエネルギーが均一になろうとする)
      ◆ 気体の場合、分子はほとんどの時間で独立に自由運動するので、分子同士が衝突する際に相互作用が発生する。[1]
  • 平均自由行程
 一度分子が衝突してから次に衝突するまでに原子が進む距離を平均自由行程距離と呼ぶ。[1]
図1.1.1.4: 気体分子の自由行程

          ✦ この衝突により分子間の運動量やエネルギーが交換される。
          ✦ 気体の運動の代表的な長さスケール=平均自由行程

      ◆ クヌーセン数$Kn$は、平均自由行程$l$、流れの代表スケール$L$とすれば、その比から以下のように示すことができる。[1]

$Kn=\dfrac{l}{L}$

      ◆ $Kn \to 0$の極限をとると連続体近似が成立する。[1]
      ◆ 標準状態の空気で平均自由行程$l=6\times10^{-8}$[$\mathrm{m}$]、$Kn \sim 1/5$でも連続体近似が成立することがわかるので、流れのスケール$L\sim30\times10^{-8}$[$\mathrm{m}$]$=0.3$[$\mathrm{\mu m}$]の小さな空間スケールでも連続体近似が成立する。[1]
      ◆ 連続体近似が成立するとき、その考察対象を連続体という。[1]

参考文献
[1]: 同志社大学工学部 水島 二郎, 流れ学, pp4-6, 2015年9月26日
[2]: 久保田浪之介 他, 今日からモノ知りシリーズ トコトンやさしい流体力学の本 NDC501, pp10-13,26,27, 2007年9月28日 初版1刷発行, 2014年6月6日 初版8刷発行