- 単位系
◆ 科学、工学、技術、産業分野では広く$\mathrm{SI}$(国際)単位系が用いられている。
物理量の関係や法則または方程式を考える際に重要な概念となる。[1]
物理量の関係や法則または方程式を考える際に重要な概念となる。[1]
1.2.1 $\mathrm{SI}$単位系
◆ 上記の単位系は以下のように分類できる。[1]
✦ $\mathrm{cgs}$単位系⇒長さ($\mathrm{cm}$)、質量($\mathrm{g}$)、時間($\mathrm{s}$)
✦ $\mathrm{MKS/MKSA}$単位系⇒長さ($\mathrm{m}$)、質量($\mathrm{kg}$)、時間($\mathrm{s}$)、電流($\mathrm{A}$)[1]
◆ $\mathrm{SI}$は国際単位系(Le Systeme International d’Unites)の略であり、$\mathrm{MSKA}$単位系を拡張したものである。[3]
i. 基本単位の定義
基本単位とは、長さ、質量、時間(秒)…といった基本物理量の測定単位として定義される。以下に、基本物理量に対応した基本単位を表1.2.1.1で示し、各単位ごとに説明を加える。
◆ $\mathrm{SI}$は国際単位系(Le Systeme International d’Unites)の略であり、$\mathrm{MSKA}$単位系を拡張したものである。[3]
i. 基本単位の定義
基本単位とは、長さ、質量、時間(秒)…といった基本物理量の測定単位として定義される。以下に、基本物理量に対応した基本単位を表1.2.1.1で示し、各単位ごとに説明を加える。
表1.2.1.1: 基本物理量および基本単位
基本物理量 | 基本単位 |
---|---|
長さ | $\mathrm{m}$(メートル) |
質量 | $\mathrm{kg}$(キログラム) |
時間(秒) | $\mathrm{s}$(セカンド) |
電流 | $\mathrm{A}$(アンペア) |
温度 | $\mathrm{K}$(ケルビン) |
光度 | $\mathrm{cd}$(カンデラ) |
物理量 | $\mathrm{mol}$(モル) |
- 長さ: m (メートル)
1989年に白金イリジウム製の国際原器に基づいて定義されたメートルは、第11回CGPMにおいて放射の波長に基づいた定義に置換えられた。[3,4]
◆ 定義
メートルは、1秒の299792458分の1の時間に光が真空中を伝わる行程の長さ
図1.2.1.1: メートルの定義
- 質量:$\mathrm{kg}$(キログラム)
白金90%・イリジウム10%の合金製の直径・高さともに約39mm円柱形状でできている国際キログラム原器により定義されたものである。[3,4]
◆ 定義
キログラムは質量の単位であって、単位の大きさは国際キログラム原器の質量に等しい
図1.2.1.2: 日本国キログラム原器 (2018年再定義)
- 秒:$\mathrm{s}$(セカンド)
◆ 定義の変換
地球の自転 → 地球の公転 → セルシウス原子の周期(周波数)
✦季節変動や経度変動が生じるため(自転→公転)
✦更なる高精度化を図るため(公転→原子の周期)[4]
図1.2.1.3: 秒の定義変換の歴史
◆ 定義
セルシウス133の原子の基底状態の二つの超微細構造準位の間の遷移に対応する放射の周期の9192631770倍の継続時間である[3]
- 電流:$\mathrm{A}$(アンペア)
◆ 定義
真空中に1m間隔で平行に配置された無限に小さい円形断面積を有する無限に長い2本の直線状導体に流れる一定の電流
✦長さ$1\mathrm{m}$の導体に$2\times10^{7}$ $\mathrm{N}$の力を及ぼし合う。[3]
◆ 2つの直線状導体に流れる電流と力の関係
✦ 十分に長い2つの直流電流が流れているとき、その電流を$I_\mathrm{1}$、$I_\mathrm{2}$[$\mathrm{A}$]とする。
✦ 電流$I_\mathrm{1}$が電流$I_\mathrm{2}$に及ぼす力を$F_\mathrm{21}$[N]、電流$I_\mathrm{2}$が電流$I_\mathrm{1}$に及ぼす力を$F_\mathrm{12}$[$\mathrm{N}$]とする。
✦ 直線導体に電流が流れると電流の向きに対して右回り(=右ねじの法則)に磁界が発生し、電流と磁場の向きの関係性(=フレミング左手の法則)から平行電流間に生じる力の向きが決まる。
図1 .2.1.4; 平行な電流の間に働く力
✦ 図1.2.1.4に示すように、2つの電流が同じ方向であれば互いに引き合い、逆向きであれば互いに反発する。
✦ 電流の定義が意味するところは上記のとおりである。[2]
- 温度:$\mathrm{K}$(ケルビン)
◆ 定義
水の三重点の熱力学温度の1/273.16倍である
◆ 水の三重点とは
✦ 水の固相(氷)、液相(水)、気相(水蒸気)の三相が共存する状態を水の三重点という。水の状態図及び三重点セルを図1.2.1.5に示す。[4]
図1 .2.1.5: 水の状態図および三重点セル
- 光度:$\mathrm{cd}$(カンデラ)
◆ 定義
周波数$540\times1012 \mathrm{Hz}$の単色放射を放出し、所定の方向における放射強度が$1/683 \mathrm{W}/\mathrm{sr}$(ワット毎ステラジアン)である光源の方向における強度である。
✦ 光度(明るさ)の単位カンデラ($\mathrm{cd}$)は、$\mathrm{SI}$基本単位で唯一の感覚量
✦ 単位の実現手法
ろうそく → ペンタン灯(ガス灯) → 白金黒体炉 → 光源
ろうそく → ペンタン灯(ガス灯) → 白金黒体炉 → 光源
✦ 光度は、光源から放射される光の単位立体角の光束量で表される。[5]
光度$I$($\mathrm{cd}$) = 光束$\Phi$($\mathrm{lm}$) / 単位立体角$\Omega$($\mathrm{sr}$)
図1 .2.1.6: 光度の概要図
⚬ 立体角⇒平面上の同一点(角の頂点)からでる2本の半直線から錐面によって区切られた部分(=錐面の開き具合を立体的に可視化したもの)[6]
図1 .2.1.7: 立体角の概要図
- 物質量:$\mathrm{mol}$(モル)
◆ 定義
$0.012\mathrm{kg}$の炭素12の中に存在する原子の数に等しい要素粒子を含む系の物質量
✦ 物質量$1\mathrm{mol}$の表現は以下の図1.2.1.8のとおりである。[7]
ii. SI組立単位
組立単位とは、基本単位同士を掛け合わせたり単位のべき乗をとることにより、組み合わせた単位を1つの記号でまとめたものを組立単位($\mathrm{SI}$)という。
✦ 物質量$1\mathrm{mol}$の表現は以下の図1.2.1.8のとおりである。[7]
図1 .2.1.8: 物質量(mol)の概念
組立単位とは、基本単位同士を掛け合わせたり単位のべき乗をとることにより、組み合わせた単位を1つの記号でまとめたものを組立単位($\mathrm{SI}$)という。
表1.2.1.2: 物理量に対するSI組立単位および基本単位
物理量 | SI組立単位 | 基本単位 |
---|---|---|
力 | $\mathrm{N}$(ニュートン) | $\mathrm{m\cdot kg/s^{2}}$ |
圧力 | $\mathrm{Pa}$(パスカル) | $\mathrm{N/m^{2}=kg/m/s^{2}}$ |
エネルギー・仕事・熱量 | $\mathrm{J}$(ジュール) | $\mathrm{N\cdot m=kg\cdot (m/s)^{2}}$ |
仕事率 | $\mathrm{W}$(ワット) | $\mathrm{J/s=kg\cdot m^{2}/s^{3}}$ |
◆ 組み合わせた基本単位の表示に関する注意点(表1.2.1.2)
ex) 圧力($\mathrm{Pa}$)の組立単位⇒$\mathrm{kg/m/s^{2}=kg/(m\cdot s^{2})}$を示す。[3]
iii. $\mathrm{SI}$接頭語
物理量を$\mathrm{SI}$単位系で表す際に、理解しやすい大きさの数字で表したいときに接頭語を用いる。接頭語の表記は、数学における浮動小数点とよく似ている。[1]
ex.1) $1013.25=1.01325 \times 10^{3}$
ex.2) 1気圧 ($1\mathrm{atm}$)=$1013.25\mathrm{hPa}$ ※$1.01325\mathrm{bar}$($1\mathrm{bar}=1\mathrm{hPa}$)
物理量を$\mathrm{SI}$単位系で表す際に、理解しやすい大きさの数字で表したいときに接頭語を用いる。接頭語の表記は、数学における浮動小数点とよく似ている。[1]
ex.1) $1013.25=1.01325 \times 10^{3}$
ex.2) 1気圧 ($1\mathrm{atm}$)=$1013.25\mathrm{hPa}$ ※$1.01325\mathrm{bar}$($1\mathrm{bar}=1\mathrm{hPa}$)
表1.2.1.3: $\mathrm{SI}$接頭語および記号
倍数 | 接頭語 | 記号 | 倍数 | 接頭語 | 記号 |
---|---|---|---|---|---|
$10^{9}$ | ギガ | $\mathrm{cd}$ | $10^{-1}$ | デシ | $\mathrm{d}$ |
$10^{6}$ | メガ | $\mathrm{M}$ | $10^{-2}$ | センチ | $\mathrm{c}$ |
$10^{3}$ | キロ | $\mathrm{K}$ | $10^{-3}$ | ミリ | $\mathrm{m}$ |
$10^{2}$ | ヘクト | $\mathrm{H}$ | $10^{-6}$ | マイクロ | $\mathrm{\mu}$ |
$10^{1}$ | デカ | $\mathrm{da}$ | $10^{-9}$ | ナノ | $\mathrm{n}$ |
参考文献
[1]: 同志社大学工学部 水島 二郎, 流れ学, pp4-6, 2015年9月26日
[2]:http://www.th.phys.titech.ac.jp/~muto/lectures/Gelmg06/Gem_chap07.pdf, 第7講 電流が磁場から受ける力, pp1
[3]: 島 弘志, 国立単位系(SI)-安心・安全を支える世界共通のものさし, pp20-24, 2007年12月19日, 第1版第1刷発行
[4]: https://www.nmij.jp/library/units/
[5]: https://www.otsukael.jp/weblearn/chapter/learnid/87/page/7/category1id/29
[6]: https://ja.wikipedia.org/wiki/立体角
[7]: https://zukai-kikenbutu.com/buturikagaku/2-mol.html#bussituryou
[1]: 同志社大学工学部 水島 二郎, 流れ学, pp4-6, 2015年9月26日
[2]:http://www.th.phys.titech.ac.jp/~muto/lectures/Gelmg06/Gem_chap07.pdf, 第7講 電流が磁場から受ける力, pp1
[3]: 島 弘志, 国立単位系(SI)-安心・安全を支える世界共通のものさし, pp20-24, 2007年12月19日, 第1版第1刷発行
[4]: https://www.nmij.jp/library/units/
[5]: https://www.otsukael.jp/weblearn/chapter/learnid/87/page/7/category1id/29
[6]: https://ja.wikipedia.org/wiki/立体角
[7]: https://zukai-kikenbutu.com/buturikagaku/2-mol.html#bussituryou