1.1 流体の分類と連続体近似
1.1.1 流体の定義
(1) 物質
i. 気体
- 性質
[1]
◆ 気体粒子間の相互作用は、電場・重力場が働く空間では微小なので無視できる。[3]
◆ 小さな圧力で容易に変形する。[1]
(ex. 物質を容器に入れると同じ形に変形する。)
◆ 圧縮すると体積が変化するとともに密度も変化する。(=圧縮性流体)[1]
図1.1.1.1: 物質の3態概念図 -気体
ii. 液体
- 性質
◆ 圧縮しても体積はほとんど変化しない。(=非圧縮性流体)
✦ 液体や気体の運動を調査する際、圧縮性を無視および考慮する必要がある場合もある。[1]
図1.1.1.2: 物質の3態概念図 -液体
iii. 固体
- 性質
◆ 液体と同様圧縮されにくい性質を持つ(小さい圧力では、ほとんど変形しない)
図1.1.1.3: 物質の3態概念図 -固体
i. 連続体近似の概要および考え方
- 概要
◆ 図1.1.1.4に示すように、連続体近似は原子・分子といった物質の構成を無視することから、分子の微視的な集団として定義される。(=連続体)
図1.1.1.4: 連続体近似の概要図
◆ 微小な分子の集団が運動すると、巨視的に空間構造が変形する。[1]
図1.1.1.5: 分子運動における空間構造の変形
✦ 固体・液体の分子間距離⇒$2\sim3\times10^{-10}$(液体⇒$20\ {}^\circ\mathrm{C}$の標準状態)
✦ 酸素・窒素の分子間距離⇒$34\times10^{-10}$[$\mathrm{m}$]
✦ 固体の弾性変形を考える際にもしばしば用いられる。[1]
- 考え方
✦ ex.) 微小空間体積$\delta V$に含まれる物質の質量$\delta M$とした際の密度$\rho$
$\rho=\displaystyle \lim_{\delta V \to 0} \dfrac{\delta V}{\delta M}$
$\delta V$が非常に小さくなる極限を考えると、原子よりも小さな長さスケールで連続体を取り扱うことになる。
図1.1.1.6: 密度の定義
◆ 図1.1.1.6の左図のように体積を大きくとって密度を測定すると、時間的に密度変化は小さくなるが、密度の測定位置に誤差が生じる。一方、同右図のように体積を小さくとって密度を測定すると、密度の測定位置が正確となる。[2]
ii. クヌーセン数
◆ 固体や液体の場合、常に隣り合う分子間で相互作用する。(運動量やエネルギーが均一になろうとする)
◆ 気体の場合、分子はほとんどの時間で独立に自由運動するので、分子同士が衝突する際に相互作用が発生する。[1]
- 平均自由行程
一度分子が衝突してから次に衝突するまでに原子が進む距離を平均自由行程距離と呼ぶ。[1]
図1.1.1.4: 気体分子の自由行程
✦ この衝突により分子間の運動量やエネルギーが交換される。
✦ 気体の運動の代表的な長さスケール=平均自由行程
◆ クヌーセン数$Kn$は、平均自由行程$l$、流れの代表スケール$L$とすれば、その比から以下のように示すことができる。[1]
$Kn=\dfrac{l}{L}$
◆ $Kn \to 0$の極限をとると連続体近似が成立する。[1]
◆ 標準状態の空気で平均自由行程$l=6\times10^{-8}$[$\mathrm{m}$]、$Kn \sim 1/5$でも連続体近似が成立することがわかるので、流れのスケール$L\sim30\times10^{-8}$[$\mathrm{m}$]$=0.3$[$\mathrm{\mu m}$]の小さな空間スケールでも連続体近似が成立する。[1]
◆ 連続体近似が成立するとき、その考察対象を連続体という。[1]
参考文献
[1]: 同志社大学工学部 水島 二郎, 流れ学, pp4-6, 2015年9月26日
[2]: 久保田浪之介 他, 今日からモノ知りシリーズ トコトンやさしい流体力学の本 NDC501, pp10-13,26,27, 2007年9月28日 初版1刷発行, 2014年6月6日 初版8刷発行
[1]: 同志社大学工学部 水島 二郎, 流れ学, pp4-6, 2015年9月26日
[2]: 久保田浪之介 他, 今日からモノ知りシリーズ トコトンやさしい流体力学の本 NDC501, pp10-13,26,27, 2007年9月28日 初版1刷発行, 2014年6月6日 初版8刷発行