2018年4月17日

表面張力

1.3 流体の基本的性質

1.3.4 表面張力
    ガラス板の上に水を垂らすと、水滴は球に近づこうとする。また、水を入れた容器に細いガラス管を入れるとガラス管の水面は容器の水面よりも高くなることがある(これを毛細管現象という)。このような現象が起きる要因として流体に引き合う力が働いているためである。この引き合う力を表面張力という。[1]

    毛細管現象を考えてみる。[2]

図1.3.4.1: 毛細管現象

    図1.3.4.1のように液の高さhでの表面張力と液体に働く重力の釣り合いを考えると、

π(r2)2hρg=πrTcosθ

    となる。ここで、rは管の直径、Tは表面張力、θは接触角である。

    上記の式の左辺は上昇した水位の質量(π(r2)2hρ [kg])と重力(g [m/s2])を掛けたもの、右辺は単位長さ当たりの表面張力T [N/m]がガラス管一周分(πr [m])にかかっていることを示している。この釣り合いの式から高さh

h=4Tcosθρgr

    と表される。ガラス管に接するとき接触角がθ=0なので、水はガラス管の中を上昇する。例えば、20 Cの水の表面張力は72.8mN/m (7.28×102N/m)、密度を約1g/cm3 (1000kg/m3) とすれば、およそ3mm上昇する。[5] [6] 一方水銀は接触角がθ=130150なので、ガラス管の中を下降する。例えば、20 Cの水銀の表面張力は472mN/m (0.472N/m)、密度を13.54g/cm3 (13540kg/m3)とすれば、およそ1.4mm下降する。[5] [6]

図1.3.4.2: 水と水銀の毛細管現象の様子

    ではなぜ細いガラス管を挿すとガラス管内部の水位が上昇するのか。
    水が持つポテンシャルエネルギーをU(h)とすると、U(h)は重力と表面張力との和で示される。U(h)が最小の値をもつには、dU(h)/dh=0の時であるから、

dU(h)dh=πr2hρg4πrTcosθ

となる。左辺は0なので結局、初めに示した釣り合いの式が導かれる。つまり、この式が示す高さhが水の持つポテンシャルエネルギーの最小位置となり、最も安定した位置になるためである。[1]


参考文献
[1]: 同志社大学工学部 水島二郎, 流れ学
[2]: JSMEテキストシリーズ 流体力学
[5]: http://subsites.icu.ac.jp/people/yoshino/SurfaceTension.html:水の特性、表面張力
[6]: http://e.sci.osaka-cu.ac.jp/yoshino/edu/water/chapter08.pdf: 第8章 液体の水 ~表面と界面~